金沢伝統工芸:金箔

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雁皮紙を柿渋などに漬け込んだ紙で、金を打ち延ばす伝統的な製法「縁付」の職人の仕事場を視察に伺った。金箔の製造は、400年以上の歴史を持ち、金沢は、金箔製造全国シェアをほぼ独占しているが、職人の高齢化と後継者不足で厳しい状況にあり、需要減に金価格の高騰が追い打ちを掛けいるとのこと。そんな中、若い息子さんが「家の仕事を無くしたくない」と決意し修行に励んでいる。

金箔製造は、箔打紙1800枚の間に5センチ角程の金箔を一枚一枚入れ、包み革でくるみ箔打機にかけて打っていく。気温や湿気が大きく影響し、金箔と箔打紙の間に生じる熱と伸び具合を見ながら作業を何度も繰り返し、徐々に打ち伸ばしていく。根気のいる作業だ。もの静かな作業をイメージしていたが、実践でその考えは一瞬にして吹き飛ぶ。先ず、箔打紙を打つ箔打機に驚かされた。見るからに重く頑丈な黒光りした鉄の塊は、機械というより鉄工所にある重機を彷彿させる。金箔を挟んだ箔打紙を箔打ち機の鉄の台に乗せてスイッチを入れる。その瞬間、目にも止まらない速度でピストンが上下し、それを打つ。モーターの稼働音とオイルの匂い、絶え間なく打ち続ける低くて大きな音、地響きのような振動を同時に体感する。正直、怖い気持ちになった。と同時に、肉体と精神で向き合い作り続けている職人の気質を思い知る。

叩き抜いた金箔は、奥様が和紙でつくった道具を指にはめ、箔打紙から一枚一枚慎重に剥がしていく。そして、剥がした金箔を竹の棒に乗せ、シワにならないように息をふきかけ、絶妙な指さばきで、綺麗な和紙に移していく。この作業も長時間、神経を集中させる心身のバランスの維持が大切なことがわかる。

金箔を一枚一枚丁寧に扱っているその様は、単なるものの扱いを超えているように感じた。この時代に残す、この先に繋げて行こうとしている職人魂を見た。hiroshi seki