対談:大崎・S house

「それぞれの言葉で、それぞれの物語を話そう」という気持ちで始めた | 素 | のひと対談。 何が大切で、どんなことを望んでいるかは、人それぞれだからおもしろい。 相手を知ることから始まるものづくり。一人ひとりの声から、形は生まれ育っていく。
photo: daisuke nakajima

Apr.2013
品川区・祖谷さん
Vol.3

  • 仕事    マンションリノベーション
  • 家族構成  女性
  • 場所    東京都品川区大崎
  • 取材・文  竹内 典子
  • 写真    中島 大助  (無記名分:SEKI DESIGN STUDIO)

「思いっきりピアノを弾きたい」という目的で場所探しをしていた祖谷さん。思いがけず中古マンションと出会い、そこから自分の空間をつくろうと思い立って、築 30 年前後の空間をリフォームした。憧れだった松本民芸家具をはじめ、祖谷さんの大事にしたい暮らしのエッセンスがいくつも散りばめられた住まいを訪ねた。

中古マンションとの出会い

祖谷さんがリフォームを終えて入居されてから、半年経つんですね。以前はここから歩いて 3 〜 4 分の賃貸マンションに住まわれていたけど、ずっとこの近辺で物件を探していたんですか?

祖谷さん

そうではないです。ピアノを思いっきり弾ける場所がほしくて、そのためのスペースを探していたんですけど、たまたま去年のGWくらいに、近所の物件をプラ プラと見ていて、このマンションと出会って、急に買うことに。もともと東京にずっと暮らしていくつもりはなくて、将来は一軒家がほしいと思っていました。 伊豆とかちょっと暖かいところで都心まで通える辺りに、庭があって海があって山があってというのを思い描いていたから、マンションを買うなんて考えてな かったんです。

何かピンとくるものがあったのですか。

祖谷さん

正直に言うと、リフォームでこういう空間をつくりたいからという目的があってここをみつけたわけではないので、買ってから、ここに一生暮らすわけじゃない とか言っていたけど、買った以上は自分の空間をつくっていこうと思うようになったんですね。そこで初めていろいろ意識して考えたんです。自分がどんな暮ら しをしたいのかって。

自分に向き合う、暮らしを考えるきっかけになったんですね。リフォーム前の部屋は、築30 年前後だからそのまま住むには少し古くなっていてしんどいかなという感じでした。でも、ここは南側リビングからの光の入り方がよくて、玄関側の 2 部屋にも窓があって、いい気を感じたし、角部屋でピアノを弾くにも好都合。よく中古マンションだと、内部は古かったり、空気の流れが悪かったり、ちょっと カビ臭かったりすることが多いのだけど、前の住人の方も丁寧に住まわれていましたよね。

祖谷さん

何かあったかい空気がありました。たぶん前の方の雰囲気だったと思うんですけど、そこがよかったから、中古だけど後押しされたという感じです。

女性一人でマンションを買って、リノベーションをするというのは、勇気のいることだったと思います。

祖谷さん

思っていた以上に大変ですね。最初に、雑誌とかホームページを見て、関さん以外にも何人かの建築家やデザイナーさんにお会いしました。その時には、リフォームで自分なりの空間をつくりたいと思うようになっていたから、自分の感性をわかってくれる人がいいと思ったし、そういうことを大事に思ってくれるプ ロの方にお願いしたいと思ったんです。何人もの方が素敵な施工例を見せて下さって、いいなと思える方もいたんですけど、最終的に関さんに依頼したのは、関 さんと一緒にやらせていただくことは、自分への投資になるんじゃないかと思ったからです。たぶんデザインをはじめ、いろんなところで、感性含めて、私が吸 収させてもらえるものがあるんじゃないかって。

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終始笑顔で語ってくれた祖谷さん。
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暮れの竣工から、八重桜の季節に。新居での生活も落ち着いてきた頃。
daisuke nakajima
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施主とデザイナーの共有命題

僕はよく覚えてるんだけど、初めてお会いしてから1週間くらいした時、祖谷さんから「関さん、私の家づくりも、これまで手がけられてきた家づくりと同じよ うに、一生懸命やってくれますか?」って言われたんです。僕はその言葉を聞いた時はすごく嬉しかったし、もちろん仕事なんだけど、それ以上のものを感じま したね。

祖谷さん

関さんが手がけられてきた物件は、都心の素敵なところが多かったから、私は北品川だし、築 30 年だし、スペースだってそんなに広くないしって(笑)。それでも、私にとっては大事な家だから、仕事の大きさではなくて、同じように扱ってもらいたいと 思って念を押したんです(笑)。

あれは、もうグサッと刺さりました。

祖谷さん

自分なりの住まいをつくろうと思った時からイメージはあったんですけど、それをどうやって言葉にしていけばいいのかっていうのは初めてのことでよくわから ない。でも、関さんはいろんなマテリアルをどうだこうだってお伝えするような方ではないし、私もせっかく関さんとやらせていただくのだから、私がどんな暮 らしをしたいかとか、何が好きなのかとか、そういうことを伝えた方がいちばんわかりやすいかなと思って、そこをお手紙やメールに書いたりしましたね。

初めての家づくりなのに、今言われたような考えで向き合ってくれて、そこからスタートできるというのは、すごくやりやすかったです。僕は機能的なこととか 物質的なことよりも、まずその人にとっての大事な部分、本質的なところからやりたいから。そういう意味で、祖谷さんはふだんからクリエーターと仕事をされ ていて慣れているのかなって思ったくらい。

祖谷さん

自分の仕事の中で、代理店のクリエーターの方たちにブリーフを出したりもするので、それもあったと思います。たとえば間取りは、最後のアウトプットの形と してそうなるものであって、一番大事なのはその空間にいて自分がどういうふうに感じたいかってこと。そこからたぶんいろんなものが決まって行くのでしょう ね。

最初のスタートでその大事なところを共有できて、デティールに落とし込んでいけた。そうすると、何でこの壁なのか、床なのか、照明なのかっていうことが、意味をもって見えてきます。

祖谷さん

私もそういう考え方で、家だけでなく、何でもそういう軸で物事を選択して行くのは好きです。

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自分にとって必要なもの・ことを大事にする暮らし。
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所有するものからその人が見えてくる。

ピアノの居場所、そしてリビング

僕はまず「ピアノ」の存在が、祖谷さんの暮らしのどういうところにあると気持ちよく暮らせるのかっていうところで、リビングに置くプランと、こもって弾け る個室プランを考えました。それと、より風通しや空気の流れをよくするために、寝室とキッチンをつなげたプランを考えて、この3つのプランを模型でお見せ したんだけど、大まかな間取りの使い方、祖谷さんにとってこの場はこういう使い方だよというのが決まるのは割と早かったですよね。

祖谷さん

そうですね。3つのプランとも、それぞれどういう使い方になるかがしっかりわかる状態で提示していただいたので。私はピアノを弾く時は基本こもりたい。人 に演奏を聴かせるのが目的ではないから。それで玄関横の個室をピアノ室にするプランを選びました。リビングはみんなで音楽を楽しむ空間で、ピアノ室は自分 が楽しむ空間。でも防音室にしたわけではないから、扉を開けて弾けばリビングまで聴こえます。この前も友達が何人か遊びに来て、みんなはリビングで鼻歌歌 いながら楽器弾いて、私は向こうでピアノ伴奏して、すごく楽しかったですよ。

それはよかった。リビングは、くつろぎ方をできるだけフリーな状態にしましたから。ソファを置いてしまうと、どうしてもテレビに向かう位置とかになってしまうし、ここは床座りの暮らしもいいねって話したんですよね。

祖谷さん

そうそう。最初に関さんに、椅子派か床派かって聞かれました。前の家にはソファがあったんですけど、全然使ってなくて、犬が使っていたくらい。だからソ ファはなくして正解で、この前友達が来た時も、みんなお酒だけ持って卓袱台に置いて、その周りにみんなで円になってくつろいで。そういう使い方って、この 空間に合っているなあと思いました。

ぴったりですね。リビングでつくったものといえば、足場板を塗装した壁の棚くらい。そこでパソコンをやるってことだったから、棚板の位置を700mmの高 さから始めて、そこだけパソコンを置けるよう奥行きを400mmくらいにして、上の棚は奥行きを浅くした。もともと持っている古い道具や家具に、棚板の色 味を合わせてます。

祖谷さん

私がお願いしたわけではないのに、棚の色を、松本民芸家具の色に合わせてくれたんですよね。

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グランドピアノに向き合う特別な部屋。
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リビングにはわんちゃんのケージと映画や音楽を楽しむオーディオセット。

松本民芸家具のこと

このダイニングテーブルとイスもそうだけど、祖谷さんは松本民芸家具がお好きで、そのことも最初に教えてくれました。

祖谷さん

実家が富山なんですけど、母は民藝が大好きで、子どもの頃からよく母の買い物とか展示会に連れて行ってもらいました。松本民芸家具も、こういうものがいい ものだとする母の影響を受けていると思います。今使っている椅子の内、2脚は実家から持ってきたもので、生活の中でたくさんはなくても、小さい頃から身近 に接していました。いいものだと自分の目でも思えるし、職人さんのつくっているものだから大事にしたいと思えて、そのことも私にとって重要です。

松本を訪ねて、実際につくり手さんともお会いになったんですよね。

祖谷さん

オーダーするなら、現地に赴いて頼みたいと思っていたので、ダイニングテーブルを頼みに行きました。実家の椅子に合う形で、そんなに大きくないものという イメージで、実際にいろいろ見ながら決めました。定番のものを少しテーラーしてもらって、本当はバタフライになるものを、バタフライにしないで1枚天板に してもらって、脚は猫脚に。松本民芸家具のよいところは、何より存在感ですね。私にとってはすごく美しいものです。

若い頃も好きでしたか?

祖谷さん

松本民芸を扱っている店へ、学生の時も見に行っていました。松本民芸のダイニングテーブルというのは、私の中ではずっと憧れで、こういう家具の似合うよう な大人になりたいなあと、大人になったら自分で松本民芸の家具をそろえたいなあとずっと思っていました。だけど賃貸で引越しが多い生活の中では、家の雰囲 気も変わってしまうし、そこまでまだ準備ができてなくて。敷居が高いとまでは言わないけれど、20代の頃は自分にはまだ早いと思うところがあったのかな。 でも、今だったらもういいかなと。

強い憧れがあったのですね。それもあって、祖谷さんの持っている道具とか暮らしのイメージは明快だったのかもしれませんね。リフォームする空間は、それを受け止める器みたいなものであって。

祖谷さん

今ようやく、身の丈に合った暮らしをしているんだと思います。それは子どもの頃から親に言われていることですけど、身の丈に合うということはすごく大事な んでしょうね。今の自分でできる中で、自分がいいなと思うもの。いいなというのは、大事にできるものという意味です。私は結構雑なところもあって、もう少 し丁寧に暮らせたらと、自分に対する希望もあったんです。つくってくれた人を感じられるというものであれば、粗末にできませんよね。

いいですね。身の丈に合った暮らし。

祖谷さん

若い頃はいろいろとものを買い替えたりした時期もあったけど、今は家を一か所に定めて、そこで大事にしていくものたちに囲まれて暮らしたいという気持ちに なって、丁寧に暮らしていくということにつながったと思います。急いでものを選ぶことはやめて、ちょっとずつ楽しもうと思えるようになりました。

暮らしながら得て行くものって大きいですからね。

祖谷さん

関さんにお願いする時に言っていたことですけど、私は経年変化を楽しめるものがよくて、家も同じように何十年経っても味が出てくるというか、汚くなっていってもそれでよしと思えるようなものがいいと。

僕は、祖谷さんの言う「経年変化」というのは、表層的な見た目の変化とかではなくて、深い部分にまで着眼が行っていると思うんです。愛着持って使っていれ ば少しくらい汚れても味になる、というような今風の経年変化の度合いとは違う部分というのかな。たとえば松本民芸家具の手仕事としてのクオリティとか、宿 している精神性とかを感じ取った上で、変化していく部分を見ている気がします。

祖谷さん

大事にしていく、それが経年変化にもつながるんですけど、家が少しずつよくなっていくように、自分の暮らしを慌てずにつくっていけたらいいかなって。松本 民芸家具をはじめ、すべてが自分の思うようにそろっていないし、これで十分だとは思っていないんだけど、今の状態を人に見られても別に構わないという感じ です。昔は、素敵な空間に住んでいるという状況を見せようとしていた部分もあって、そこまで好きでもないのに、ちょっとモダンなものを飾ったりしてました から。

僕だって20代の頃は伊豆の松崎出身だということに蓋していたもの。いかにも生まれも育ちも東京のデザイナーですみたいな顔して。当時はバブリーな時代 で、ブティックのデザインとかしてたし。それから30代になって、結婚して子供ができて、だんだん隠すものがなくなってきて、今では僕は伊豆のサルだよっ て公言している(笑)。

祖谷さん

だんだんと、人から見たらってことではなく、自分にとって大事なものが見えてきて。ちょっとずつですけどね。この方が楽だし、幸せに感じられます。

daisuke nakajima
物質的な価値を超えた存在と共に暮らす。
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祖谷さんにとっての大切なものが調和するインテリア。
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この家に馴染む使い込まれた道具。
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使い込むほどに味わいが増す御影石の洗面台と木製ハンドルの水栓金具の取り合わせ。
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機能的なシステムキッチンと見やすく使いやすいオーブン棚で構成したキッチン。
私=関です。

左官の壁と燻製仕上げの床

祖谷さんにとってのいいものというのは、その後も愛おしく大事にしていけるようなものですよね。単に格好いいとかきれいとか、今流行っているというものと は違う。そのものの背景として、どんな人がどんな思いでつくっているか、ということを感じ取る方だから、たとえば壁でいうと、ただメーカーのカタログを広 げてどれが好みかとか、コストに合わせてこの中から選んでとか、そんなことを聞くような話ではないわけです。塗装や左官、クロスなどいろんなマテリアルが 考えられるのだけれど、提案したのは職人による左官仕上げの壁。素材も自分好みにつくりやすくて、石灰に砂を入れたり、雲母を入れたり、大理石の粉を入れ たり、色もいろいろできる。生きた素材だから、完成した時には呼吸する素材となって、乾燥した時期には湿気を放ち、ジメッとした季節には湿気を吸ってサ ラッとした空気をつくり出す。こういうコンクリートのマンションではとくに、人にやさしく作用する素材なので、左官をやりたいねって話をしました。

祖谷さん

予算的なこともあるし、最初はエリアを限定して左官にしようという話だったけど、結局はほとんどの壁を左官で仕上げてもらいました。

当初の予定ではリビング側だけ。そこを全体の予算の中で見直して、左官にかける部分を大きくしていった。

祖谷さん

そうしてみて、本当によかったです。

祖谷さんはその辺りの優先順位もすごくハッキリしてました。

祖谷さん

それは関さんから「床、壁は大事だよ」って教えていただいたからですよ。経年変化を楽しむ上でも、素材にはできるだけこだわって大事に選んでいきましょ うって言ってくださった。それと造作はたくさんつくり込んでしまうと、長いこと使う中で、フレキシビリティに欠けたり、飽きたりすることもあると聞いて、 なるべく造作はしないで、床と壁にこだわることにしました(笑)。

床は無垢材のタモにしたんですけど、タモとかクリという素材は、燻製にするときれいに木目が出てきます。表面に色を塗る染色仕上げでは、祖谷さんの空間として表現できないことがわかって、燻製仕上げにしました。

祖谷さん

染色塗装では経年変化に耐えられないと、関さんは言っていましたね。

そう。祖谷さんの暮らしにかなうようにしたいという背景があるから、単なる表面的な染色塗装で濃いとか明るいとかではないなと。燻製処理は昔からある手法 で、いろんな木材を燻製できて、それによって素材自体がある意味変化していくわけです。価格的にもこなれてますし、床暖房を入れたいと思っていたので、そこに対応できる床材を選びました。

祖谷さん

出来上がるまでは、どうなるのかな、色も明るいかなってずっと気になっていたんだけど、いい感じの仕上がりでよかったです。それに使っている内に深い色になっていくと思います。

daisuke nakajima
やさしさやおおらかさを感じる家にするために、弧を描いた壁を左官で仕上げた。
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家具と共に、経年変化していく無垢のフローリング。
daisuke nakajima
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巾木の機能美を共有し、インテリアとしてのバランスをとる。
レバーハンドル。この家には、あたたかで肌触りの良い鋳物が似合う。
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玄関はこの家の顔。左官をぬり込んだニッチに飾られた花がゲストを迎える。

重んじる気持ち

僕は今日、玄関を入った時、玄関の壁をアールの左官仕上げにしてよかったと改めて思いました。やはり玄関に入って、ここが祖谷さんの家だと感じられることって大事で、アールの壁と左官の飾り棚はすごくポイントになっています。

祖谷さん

玄関は大事ですものね。

広さは変えられなくても、ちゃんと家の顔をつくりたかったんです。アール部分に設けた飾り棚は、花瓶を置けば水がこぼれたりするし、普通は木の台をつくる と思うんです。そこをあえて左官だけで回しこんだことで、空間が軽やかになっています。それから玄関の上には厄除けもあって。昔からの精神的な拠り所を大 事にされていますよね。僕が印象的に覚えているのは、ここを着工する時に、祖谷さんはご祈祷をされたでしょう。

祖谷さん

本当は一軒家なら地鎮祭とかなんでしょうけど、マンションのリフォームなので、工事の方たちの無事を願って、リフォーム祈願みたいなことをお願いしたんです。空間が麗しく整いますようにと、神主さんがご祈祷くださいました。

工事中もお神酒を置いてくれて。職人さんたちは1か月半とか出入りするわけで、そういうことをしてもらえるのは、みんな嬉しかったと思うんです。変な意味 ではなく、いい気がこもるっていうのかな。人がつくるものですからね。工事現場はすごく埃が舞うんだけど、ある時現場に来てみたら、ちゃんとお神酒の上に ビニールがかかっていて、埃がたまらないようにって職人さんや監督さんがしてくれていた。

祖谷さん

仕事が終わってから、お神酒を取り換えに行っていたんですけど、それを気づいてくださって。

そういう思いが通じると、みんなが本当に現場を大事につくってくれますね。

祖谷さん

でも自分の家だから、そういう気持ちになって普通だと思っています。

僕はいつも思うんだけど、デザイナーは図面引いて、デザインをして、模型つくって、そこでデザインが終わるのではなく、すべてが完成した時にデザインも終 わるんですよね。僕が左官を塗るわけじゃないから、いかに現場の職人さんにこちらの思いを理解してもらえるか、そのことで丁寧な仕事になったりするわけだ し。そういう意味でもここはいい現場になって、完成後のオープンハウスの時に、よその施工業者の方を知人の建築家が連れて来てくれたんだけど、すばらしい クオリティだねって言ってくださった。

祖谷さん

プロの方にそう言っていただけるのは嬉しいですね。

本当にすごくきれいなつくりなんです。左官と枠の納まりなんかも、丁寧にやってくれて、コンセントプレート周り一つにしてもきれいに仕上げてくれている。今こうして空間を見回して、神棚を祀っている姿を見ると、祖谷さんの「重んじる」という姿勢をすごく感じます。

daisuke nakajima
神さまに見守られながら暮らす。
daisuke nakajima
photo: daisuke nakajima

暮らしながらつくっていく

この家に祖谷さんが入居されてから、僕は今日はじめて祖谷さんの暮らしを拝見したんだけど、祖谷さんらしい暮らしぶりだなと思いました。物の数とか置き方とかの抜け加減や重さのバランスがいいですね。たくさん置き過ぎないで、ものを大事に置いている。

祖谷さん

本はたくさん読むんですけど、読み終わったら大事な本だけ残して、あとは古本屋さんに出したり人にあげてしまうんです。大事な本がこの倍くらいあって、リ ビングに置くのはこれだけにして、ふだん読まないものはピアノ室の棚に収納しています。服とかバッグは、関さんにも驚かれたけど、あまり持ってないんで す。

一つ一つ、自分の好きな物を選んで、整理整頓してあって心地いいです。このダイニングの食器棚は、新しく買ったものですよね。

祖谷さん

リフォーム中に見つけて、お店に取り置きしておいてもらったものです。引き戸の開け閉めの音がたまらなく良くて一目惚れしました。最初は食器を重ねて収納 するつもりだったんですけど、届いてみたら思ったより華奢で、それでショーケースっぽく民藝の器とかを置いています。関さんの家でガラスの食器棚を見て、 そういうショーケース的な使い方もいいなと思ったんです。レイアウトを変えて楽しみたいですね。

ちゃんと生活の中で使っているんだろうなという感じで、普段使いの器としてのほどよさもあって、そこも居心地の良さを感じるところなんでしょうね。いちば ん最初の目的だったピアノを存分に弾ける環境を得て、さらに憧れだった松本民芸家具や好きな道具とともに、丁寧に暮らしているというのは、祖谷さんにとっ て本当に幸せなことなんだと感じました。

祖谷さん

お陰様で、すごくこの家を気に入っています。ちょっとずつ、好きな物が増えていくといいですし、そういうことを楽しめたらと思っています。何年かして来て いただいた時に、また違うふうになっているかなということも楽しみですし、これからの経験の中で、次は一軒家でこんな暮らしをしてみよう、なんて思う時が 来るのもありかなと思っています。

ぜひまた5年後10年後の祖谷さんの暮らしを拝見させてください。今日はどうも有り難うございました。

祖谷さん

有難うございました。

daisuke nakajima
趣きある飾り棚に大切な民芸の器を並べてみせる。
daisuke nakajima
daisuke nakajima
飾り棚をライトアップすることで、暮らしにゆとりやもてなしの気持ちが生まれる。