知音 : 裏千家・一二三会 おもてなし講座
- 仕事 オリジナル商品企画制作、ウェブサイトディレクション
- クライアント 一二三会
- 場所 文京区護国寺
- 写真 梶原 敏英 一二三会 SEKI DESIGN STUDIO
オリジナルの茶箱の企画プロデュース、制作、運営協力までを手がける裏千家・一二三会のおもてなし講座。
代表の久保 比登美 先生とのつながりは「OVE南青山」からでした。
OVEでの出会い
「Life Creation Space OVE」は、株式会社シマノのコンセプトスペースです。
2006年にスタートしたOVEの立ち上げに参加させていただき、インテリアデザインを手がけました。
OVEでは、新しい自転車の愉しみ方やカフェや家具、雑貨、アートイベントなどさまざまなコト・モノにふれる体験を提供されていますが、そのひとつに、自転車で出かけた先でお茶を愉しむ、野点散走があります。久保先生は、OVEでのイベントで茶道を融合させた取り組みをされていました。
2009年にOVE南青山全体を会場として、セキデザインスタジオの商品をすべて持ち込んで、大々的な個展を開催させていただきました。その際に、桐の重箱を使って、収納された茶道具を展開してお抹茶を点てるデモンストレーションを久保先生にお願いしました。この出会いから、一二三会と大きく関わっていくことになりました。
おもてなし講座をいっしょにつくる
ふだんのお稽古とは別に、定期的に稽古場に来られないビジネスマンを対象にした講座をつくりたいと考えた久保先生から、その講座のための茶箱の制作のご依頼をいただきました。
おもてなし講座の実践を通して、ビジネスで成功するだけでなく、日本文化と精神のすばらしさを体験し、多くの人に伝えることができるようになるおもてなし講座は、わずか三回で、その本質を日常生活や仕事のなかで活かすことができるようにプログラムされています。その内容に沿って、お茶のことを何も知らない人からお稽古を積んだ人まで、あらゆる対象を考えて中に何を入れるべきか、どのような素材にするかを先生のご意見をお聞きしながらつくりあげていきました。
かたちを実現する
ポットとお湯があれば、お抹茶を点てられる最小で最適なものが入った箱。ふつうのお稽古で使う茶箱とは異なり、そのサイズは、必要なものすべてがぴったりと納まるようにつくられています。桐の伝統職人と材質のあり方を検討し、桐はうづくり加工して丸みを帯びたかたちとし、触感を楽しめるようにしています。蓋を開けた時に、蓋がトレイとなり、盆略点前ができるように、桐材の上には、鍛鉄作家に依頼してつくらせたハンドタッチ加工のアルミ板を貼っています。うづくりとハンドタッチ加工は見た目に美しいだけでなく傷が目立ちにくい利点があります。最後の仕上げは、箱の上に一二三会のロゴをレーザーで印字しています。茶箱と茶碗は、白と黒をご用意し、受講者が選べるようになっています。茶碗の白は多治見の作家、横山 拓也氏に、黒は亀岡の松楽窯で焼いていただいています。茶碗を守る小風呂敷も選べるよう、茶箱のスタイルに合う生地を毎回多種仕入れて縫製し、ご用意しています。
お湯をこぼす建水は、無垢のひのきの木の削り出しで、木の手配、乾燥から削り出しまで時間のかかる作業で、木工作家・有城 利博氏による丁寧な仕事で成り立っています。
想いをつつむ
一二三会のロゴマーク入りの風呂敷は、神楽坂で草木染織物工房、アトリエ・ヴィアーレを主宰している 尾島徑子先生の手による藍、柿渋、桧の一品です。 尾島先生の染めた布は、無地と言ってもとても洗練されたテクスチャーがあり、美しい自然の色に癒されます。 濃紺とブルーの布は、藍の葉を発酵させて作ったすくもによる正藍染めです。茶色の濃淡は、渋柿の青い実を圧搾し、発酵、熟成させた液で染めた柿渋染め、赤みのある布は桧染めです。
水屋からの学び
毎回の講座の度に、茶箱を納品するだけでなく、講座の運営にもボランティアスタッフとして携わり、普段のお稽古とは趣の異なった水屋仕事=講座をスムーズに進行させるためのお手伝いもさせていただいています。
講座はお抹茶を美味しく点てる基礎が身に付く一の段と細かい所作のご指導、おもてなしのお茶を点てるための心構え、茶道への導入としての座学が学べる二の段があり、講座の最終回には、懐石を味わいながら茶事を通してその意味を体感します。お稽古では、長い時間をかけて学ぶ気づきを、講座の中で短期間に授けていただける内容で、古来の茶文化を知る喜びを感じながら、お茶室で集中して学ぶことができます。
一二三会の魅力はなんといっても、久保比登美 先生のうつくしさにあります。たおやかな神々しい所作から、茶室の小宇宙を感じられます。
和の文化を伝える
この講座を修了された方々は、この茶箱を使ってオフィスやビジネスでの活用はもちろん、国内の出張や海外でも、さまざまな場所でおもてなしを実践されています。
また、ご自宅でのお客様の接待や家族のつながりを深めたり、パーティでお茶を点て合って楽しまれています。
この茶箱は、一二三会のボランティア活動でも使用され、多くの方に茶道のすばらしさを伝えるツールとして役立っています。
ウェブサイト制作
2つのサイトのディレクションもおこなっています。
一二三会ウェブサイト
https://123kai.org/
一二三会・おもてなし講座
https://omotenashi-kouza.com/