南平台・F house
- プロジェクト名 南平台・F house
- 計画種別 マンションリノベーション
- 用途 住宅
- 竣工年 2011
- 計画地 東京・南平台
- 構造 RC
- 計画面積 116.8㎡
- 施工 英興社
- 撮影 Nacasa & Partners Inc. 関 洋
「リノベーションしたい」という依頼は、人それぞれの目的がある。施主の要望と感覚を擦り合わせながら、心身にフィットするカタチに作り替える事は、リノベーションと言うよりカスタマイズと言った方が近い。施主らしさと既存の黒い大理石との相性から、ハンドル、フック、スイッチ・コンセントプレート、衛生金物などは、全て黒で統一した。
plan
リノベーションというより「カスタマイズ」
Aug.2012
渋谷区・ Fさん
Vol.1
- 仕事 マンションリノベーション
- 家族構成 男性
- 場所 渋谷区南平台
- 取材・文 竹内 典子
- 写真 Nacasa & Partners Shigeta Satoshi (無記名分:SEKI DESIGN STUDIO)
自分らしい空気感をつくる。
関
いつも思っていることなんですけど、玄関に一歩入った途端、その家の空気に包まれる。そういう家っていいなぁと。F邸の玄関ホールは、まさにFさんらしい空気感になりましたよね。とくに、コート掛けの黒いバーに、黒革のジャケットを掛けて、足元にトランクを置いたところは目を引きますね。黒が効いています。
Fさん
これまでコートなどは玄関に脱ぎ捨てていたので、こんなハンガーに掛けたら便利だし、格好いいし、一石二鳥です。
関
「玄関はその家の顔」といわれますが、黒を取り入れた大人っぽさ、オークや左官による上質感というのは、「シンプルでナチュラルでラグジュアリー」というF邸のリノベーションテーマにピタリとはまりました。
Fさん
そうですね。自分らしさのある空間になったと感じています。
関
もともと床が玄関からLDまでずっと黒の大理石という強い存在としてあって、でもリノベーションで黒というのがこんなにうまいバランスではまったのは、Fさんが自分の好みを僕にいろいろと教えてくれたからなんです。浴室のシャワーや水栓金具に、グローエの黒いものはどうかとか、自分からも提案してくれたし、一緒にショールームを回って、いろんな黒の色幅とか質感を共感することもできました。でも、絶対これを使ってという言い方はされないし、だからFさんの好みを考えながらも家全体のバランスを俯瞰して、黒をデザインできたんですね。
Fさん
コンセントプレートやパウダールームのさまざまな金具、それに玄関の靴ベラを下げるフックや、ウォークインクロゼットのガラス板のダボとか、細かいところまで黒を使っていますよね。
関
デザインの調和という面もありますけど、Fさんのこだわり感を表したかったんです。
Fさん
違和感がなくて、先日までダボが黒だったことに、気付きませんでした。
関
それはある意味、成功です(笑)
僕はFさんがすでに暮らしていたマンションをリノベーションさせてもらったわけですが、最初からFさんには「自分好みの空間で暮らしたい」という明確な思いがあったように思います。たとえば素材についても、オークの具体的なイメージがありましたね。
Fさん
そうですね。いろいろな素材があるけれど、ここにはオークがしっくりきます。時代の変遷とともに、自分もナチュラル志向になっているのかなというのは感じます。アルフレックスのカタログを見ても、ウォールナットの派手めのものはなくなってきていますね。
関
そのナチュラル感を表すのに、Fさんにとってはオークであり、ウォールナットの色味とは違うんですよね。もともと書斎の本棚やデスクは、オークでオーダーしたものをFさんは使っていらしたし、静かなオークというか、Fさんのオークに対するイメージはそういうところからも感じました。
Fさん
何年も先のことまではわかりませんが、今は自分の感覚にフィットしています。