DIALOG IN THE DARK
DIALOG IN THE DARK

DIALOG IN THE DARK

  • 仕事     ロビーデザイン
  • クライアント DIALOG IN THE DARK
  • 場所     渋谷区神宮前
  • 写真     DIALOG IN THE DARK SEKI DESIGN STUDIO
ロビーデザインを手がけさせていただいた「DIALOG IN THE DARK」。代表の志村真介さんのことばを集めて、ここに紹介させていただきます。その活動のすばらしさを、多くの人に知ってもらえるよう私たちも応援しています。

見えない、が、見える!

東京都渋谷区・神宮前の地下空間にある「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。暗闇のエキスパートである視覚障碍者のサポートのもと、参加者がグループとなって暗闇の中を探検し、さまざまなシーンを体験するソーシャル・エンターテインメント。視覚以外のさまざまな感覚の可能性に気づくとともに、コミュニケーションの大切さ、人のあたたかさを思い出す。暗闇の中では、社会的な地位や肩書き、容姿、名前も役に立たず、年齢や性別を超えて、フラットな立場で接することができる。見えないことで見えてくるものがあります。

1988年にドイツの哲学者アンドレアス・ハイネッケさんが始めたもので、これまで世界39か国、130都市以上で開催されています。日本では1999年から寺院や廃校を利用し、期間限定で開催してきましたが、2009年からは渋谷区神宮前の会場で常設展を実施しています。2013年からは大阪でも積水ハウスとの共創で「対話のある家」として長期開催を行っています。これまで世界で800万人以上、日本でも17万人以上の人たちが体験しています。

 

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創始者ハイネッケさんのストーリー

ハイネッケさんは、父親がドイツ人、母親がユダヤ人で、母の親戚はアウシュヴィッツでみな亡くなっています。なぜ、民族が違うことだけで人は人を殺せるのか。しかも、自分の血には、その両方が混じっていることに子供のころ衝撃を受けたことから、哲学を志しました。そんな中で、ダイアログ=対話の哲学に出合い、対話することで違った文化を融合させる可能性があることを知ります。

社会に出て彼はラジオ局で働き始めますが、そこで事故で失明したジャーナリストの研修係になります。これが、ダイアログのアイデアにつながります。 視覚障害者というのは社会的弱者で、何もできない存在だと思っていたのですが、一緒に働いてみると違った感性を持っているし、自分よりも能力が高いところもある。この体験をみんなでシェアしたいということで思いついたのが、部屋の電気を消し、視覚障害者と同じ立場で対話することでした。そこから、暗闇の中で椅子に座ったり、遊具で遊んだり、飲み物を飲んだりという形に発展していったとのことです。

 

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ビジネスでの活用

平日は企業研修や団体貸切の利用が多く、いろいろなミッションに、視覚障害者がトレーナーになって取り組んでいます。人材研修、商品開発、マーケティング、イベントなどビジネスのあらゆるシーンで利用できる企画が行われています。

人材研修では、新人教育の一貫としてのワークショップや、企業合併後の組織融合を円滑にするためのプログラムとして利用されています。視覚以外の感覚と声でのコミュニケーションを通じて様々な気づきを得ていきます。実践を通して学べる体験型研修として、既に400社を超える企業で導入されています。

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」(以下DID)を体験すると、相手を思いやる力を取り戻します。自己や他者の感情を知覚し、自分の感情をコントロールするEQ(心の知能指数)の測定を精神科医の協力で実施していますが、体験後はその数値が大きく上がるとのことです。

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視覚を持たない特別な価値

東京と大阪の約60人のスタッフのうちの40人くらいは視覚障害者です。視覚障害者のアテンドの公募から研修にも一人一人非常に細やかな対応で、時間と労力をかけて行われています。このイベントは、これまで職種が限られていた彼らにしかできない仕事を与えるため、雇用拡大においても非常に大きな意味を持ちます。

この活動は、アテンドの視覚障害者にも大きな影響を与えます。彼らは、生まれてからこれまで、健常者から助けられた経験が多く、「ありがとう」と言う立場だった。ところがここで働き始めると、健常者から「ありがとう」と言われる。視覚障害者にとって初めての経験。彼らの中にも自己肯定感が生まれます。

日本の「DID」が世界に先行して試みているのが、企業とのコラボレーション。ここで働く視覚障害者と企業との商品開発も行っていて、今治のタオルメーカーと組んで開発した特別な肌触りのタオルもその例です。「DID」の視覚障害者がテイスティングすることで、タオル本来の機能である「人肌に触れた時の吸水・吸湿」「肌触り」「風合い」をより高めています。
田中産業  http://www.goldpearl.co.jp/

東北支援になればと、会津の漆器職人と恊働して高齢者にも使いやすいお椀も作っています。視覚障害者は、器の水平がわからなくて、中のものをこぼすことがあります。それで、縁にエッジをつけることで水平だとわかるようにしました。
めぐる  http://meguru-urushi.com

ナイキが靴のフィット感を実感してもらうために、DID にプレスを呼んで靴を履いてもらい、暗闇を歩いてもらうということも行われ、ハーゲンダッツの新商品を暗闇でテイスティングしてもらうということも。可能性は無限に広がります。

東京・外苑前の常設展のほか、大阪の住ムフムラボ内「対話のある家」でも、積水ハウスとの共創プログラムによる暗闇体験ができます。

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『暗闇から世界が変わる ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦』志村真介著(講談社現代新書)

すべての肩書き、立場から自由になれる「暗闇での対話」から、人間関係の意識も変わります。社会を少しでも良くしたいと思っているすべての人へ贈る物語。ここから日本の希望は始まります。

日本の企業は、「助けて」が言い出せない雰囲気があり、それが年間3万人も自殺者を生む要因にもなっていると思います。リーダーシップというと強い指導力で部下を引っ張っていくことと思われがちですが、それだけではありません。実は「これできないから助けてよ」と言うほうが、部下のやる気も能力も引き出せます。DIDの暗闇の中で橋が怖くて渡れない時は、「助けて」と言葉に出して言わなければ誰も気づいてくれません。そこで助けを求めて手助けされる経験をすると、「そうか、人は助けてと言えば、助けてくれるんだ」と改めて気づくわけです。元々、誰にも備わっていたことが、顕在化しただけなんですね。

─「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とは、

人とのつながりや人との信頼関係をソーシャルキャピタル、社会関係資本と言いますが、DID は、それを醸成する装置だと思います。といっても、難しいことを言っているのではなくて、困っている人がいたら助けてあげようと思う気持ち、自発的に社会とかかわっていく力を再生させてくれる装置です。

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真介さんと季世恵さんのストーリー

真介さんは昨年2月、講演中に倒れ、病院に運ばれました。診断の結果は、大動脈解離。幸運なことに手術は成功し、後遺症が残ることもなく奇跡的に回復されました。

後遺症として目が見えなくなる可能性があると言われていた当時、不安に思っていた志村さんにアテンドたちは、「別にいーよ。目が見えなくなったら、アテンドすればいいから。見えないくらい、なんでもないんだから。」と明るく励ましてくれました。

元気なときには思いもしていなかった介護生活を一番近くで支えてくれたのは、バースセラピストの季世恵さん。人の誕生から臨終までを含めた延べ4万人を超えるカウンセリングを行ってきました。妊婦や子育てに悩む母、心にトラブルを抱える人をメインにカウンセリングされ、その活動を通し『こども環境会議』を設立。1999年からはダイアログ・イン・ザ・ダークの理事となり、多様性への理解と対話の必要性を伝えています。また末期がんを患う方へのターミナルケアは独自の手法で本人や家族と関わり、その方法は多くの医療者から注目を浴びています。ワークショップ、ファシリテーションの日本での第一人者であると共に人を幸せにする商品企画開発を通販会社とタイアップし展開し、ロングラン商品開発に定評があります。講演、ワークショップなど多数。4児の母でもあります。

真介さんは、100万回くらい季世恵さんにプロポーズをして、断られ続けていました。倒れたときにストレッチャーに乗って手術室に向かう途中、季世恵さんに「生きて帰ってきたら一緒になってもいいよ」と言われ、こうして戻ってくることができたと、恥ずかしそうにお話しされていました。前代未聞の暗闇での結婚式は、ハイネッケさんご夫妻が立会人となり、参列者全員の愛がひとつとなる心温まる挙式でした。

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「DIALOG IN THE DARK」 の使命

現在日本には、年間3万人もの自殺者がいます。尊いかけがえのない命を自ら死を選択する前の過程で、「助けて」と声をあげることができないのです。DIDでは、暗闇のプロジェクトとして人と人とを繋ぐことを付加価値として提供しています。不思議と明るい中では、「ありがとう」という言葉も恥ずかしくて伝えられないことがあります。

「DIDの願いは、全ての人がそれぞれの個性を生かし、どちらかが無理することなく、誰もが生まれてきて良かったと思える、そんな社会を作ろうとしています。」

今、ヨーロッパではDIDだけでなく、耳が聞こえない状況のなかで聴覚障害者がアテンドする「ダイアログ・イン・サイレンス」と、70歳以上の高齢者がアテンドする「ダイアログ・ウィズ・タイム」も実施しています。耳が聞こえないこと、目が見えないこと、高齢であることは一般的にマイナスなイメージがありますが、彼らだからこそできることとしてポジティブに変換するプロジェクトが生まれています。日本でも、2020年までにこの3つの対話のミュージアムをつくろうと始動しています。

DIALOG IN THE DARK
http://www.dialoginthedark.com/

Nacasa & Partners Inc.
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